専業主婦の妻

会社で決定権を握っていたのは、年功序列や男性優遇で大きな恩恵を受ける男性の年配正社員だったため、「性別や年齢にかかわらず、働きに見合った透明な人事制度を」という提案には、こうした人々の激しい抵抗が起きた。その結果、大手の企業については、大きな変化は起きなかった。だから、今も男性の多くは「正社員」で、自分からやめなければ解雇の心配はない。年功序列も続いている。とはいえ、根本的な改革を避けたために経済はさして上向かず、マイナス成長と低成長の間を繰り返していた。そこで、運よく上級管理職や経営陣などの基幹部門に入ることができた一部の男性たちは、それ以外のコースとして、「自己開発コース」と呼ばれる安い賃金の人事コースを男性の中にも導入し、人件費を全体で抑えることを思いついた。転勤を拒否したり、上司の覚えが悪かったりすれば、この「自己開発コース」に振り分けられ、昇進から外される。このコースに入ると年功序列はきかず、男性であっても、何年いても賃金は横這いだ。専業主婦の妻を扶養できる高い生涯賃金を基幹部門の男性たちに保障するためには仕方ない、という苦肉の策だった。一方、中小企業の方は、経済構造の激変にともなって倒産が頻発、男性社員でも終身雇用はおぼつかない状況が進行していた。こうした男性しかつかめなかった女性は、時間あたりの賃金が安いパートなどを昼と夜かけもちして長時間働き、家計を補助するしかなかった。悦子には劣るが、愛子の夫の誠は、一応大手企業の管理職にもぐりこむことができた。ここを読んだら、これから、出会う相手と上手に駆け引きができますね。


出典::
EP046_L